14.天体
「望遠鏡、持ってきたよ」
「お、おう……本気で持ってきたんだ」
彩華が白い筒を背負って部室に入ってきたとき、陽花は椅子から転げ落ちそうになった。
「彩華……それ、どうやって持ってきたんだよ」
陽花が尋ねると、彩華は部室の扉に空いている左手を触れたまま首を傾げ、少しして思いついたように、
「ああ、学校の前までお兄ちゃんに車で送ってもらったの」
ああ、と陽花は納得して頷いた。
「お疲れ様。わざわざありがとね……」
陽花はそう言って手を叩く。カツカツと音を立てながら、彩華が近づいてくる。
彩華の杖が、陽花の足に当たる。
「……わたしにはもう見えないけどさ、陽花くんにはわたしの好きなもの、見せたくて」
そう言って、彩華は微笑んだ。
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