13.レンズ
レンズ越しに見た織嶋綾姫を、ぼくは未だによく覚えている。
綾姫は主演の女の子、親友の金成は脚本と演出、ぼくはカメラマン。そんなちゃちな、自主制作の映画。今思えばままごとみたいなものだったが、あの頃は間違いなく輝きに満ちていた。
――綾姫と金成の抱き合う姿を見るまでは。
ある種、綾姫を神聖視していたぼくは大いに落胆した。どこまでも普通の人間だったのだと。
だからぼくは綾姫を殺した。殺しながら、その光景にビデオを回した。詳細は省こう。ぼくと綾姫だけの思い出だから。とても大切な思い出なのだ。
……レンズ越しに見た織嶋綾姫を、ぼくは未だによく覚えている。
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