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『朝霧の巫女』設定覚書

(2008年あたりに書く。2013年、単行本無事完結しましたね!)  


注意以下、『妖の寄る家』『朝霧の巫女』1~5までのネタバレがあります。ご注意ください。



『妖の寄る家 -昭和霊異記Ⅰ-』
短編集「妖の寄る家」に収録。
天津忠明とその助手のこまさんのお話。タイトル通り昭和の話。
テンション高いこまさん可愛いよ。
つくも神の話。

『猫に憑く血 -昭和霊異記Ⅱ-』
短編集「妖の寄る家」に収録。

こまさんと忠明の出会いの話。
猫のこまの主人・鍋島双一郎は竜造寺に殺された。そして鍋島の一族は途絶える。その復讐をするためにこまさんは猫叉に。

隻腕・隻眼の忠明。
『鬼のしるし』と呼ばれる特徴。

実は竜造寺が双一郎。
養子入りしていた。

『山を魅る子 -昭和霊異記Ⅲ-』
短編集「妖の寄る家」に収録。

忠明の幼少期の話。山の中に女性が見える忠明。
この忠明をやしなってるのが稗田さん。つまり柚子の先祖。

忠明は『決して独りで山へ入ってはいけない』
血が特別だから。

忠明の母親・稗田市子は、忠明を産んですぐに狂人に(本当かは分からない)。忠明は鬼子と呼ばれている。
母親に誘われ、山へ入る忠明。
『山の民』と呼ばれる者たちが『神降ろし』をはじめようとしている。
母は傀儡だった。
忠明は『審神者(さにわ)の血』を継ぐもの。
『山の民』とは不順国神(まつろわぬくにつかみ)の末裔。
つまりは従属しない国津神か。

審神者の子の目……『眇目(すがめ)』は幽世と現世を仲立つ存在。忠明の眇目は山の民に取られた。

乱裁道宗。山の民の名前。 忠明の父、天津忠彦は乱裁道宗に殺される。同時に忠明の左腕は断ち切られた。
その左手に単眼の龍神・天津彦根神が宿った。本来は巫女を使い降ろすものである。
そして山に呼ばれる。

★天津と稗田の家系
『朝霧の巫女』における天津忠尋の父親・忠寿の両親が忠明とこまさんである。 つまり、こまさんは忠尋の祖母にあたる。 で稗田三姉妹の母親・御幸の妹に天津結実、忠尋の母親である。

『朝霧の巫女』主要設定
・舞台は広島の三次市。

長女・稗田倉子
次女・柚子
三女・珠

・乱裁の言った『あの男』は忠明のこと。
・こまさんの息子であり、忠尋の父親の忠寿は死んでいる。身体が弱く、神降ろしに耐えられなかった。
・楠木正史
・巫女委員会
・昭和期に発生した原因不明の『霊崩壊』。
・七生滅敵?
 現世の化生のものは『あの事件』により絶えた。
・こまさんは首の鈴の『縛り』によって逃れた。これは現世に留める楔のようなもの。
・『朝霧の巫女』は柚子
 感応者。
・六波羅機関
・警視庁抜刀隊
・『朝霧の巫女』は岩笛に共鳴し、入神状態になる。『神降ろし』……古き神が蘇る。
 審神者は神の名前を唱える。
 そして『徴』が出てなければならない。
 『徴(しるし)』……つまり『鬼のしるし』である。神の姿を模し、単眼にすること。
・乱裁の目的。
 審神者に幽世と現世を隔てる岩戸のくびきを取り除かさせ、泥矛を地に突き立てる。
 いわば神代復古。
・忠尋の母親・天津結実は陰陽頭で、日瑠子陛下の元で動いている。
 陛下は三種の神器を集め、神話の蘇生を考えている。
・乱裁の主上、山の神。
 依代は『朝霧の巫女』
 現在の依代は菊理。
・平田。
 六波羅機関の人間。
 教授である。馬の人。
 研究により、審神者の模造を作った?

『朝霧の巫女』四巻までと『稲生怪談』
朝霧の巫女は稲生怪談をベースに書かれている。

稲生怪談とは、広島県三次に伝わる、武太夫と権八による肝試しから始まる物語なのだが、これが朝霧の巫女の話と密接な関わりがある。

武太夫と権八はある日、それぞれ比熊山へ登り、肝試しをした。
それから二か月ほどした七月一日。
武太夫と権八の元へ、妖怪があらわれた……


ここから、武太夫と権八が一か月間妖怪と渡り合う物語が展開されるわけだ。
さて、ここで「朝霧の巫女」が関連付けられる。

まず、武太夫の元に現れた妖怪は大きなひげ手の、一つ目の巨人である。
「朝霧の巫女」を読んだ者ならわかるであろう。第四話①で忠尋を襲った巨人そのものなのだ。
ちなみに、稲生怪談には「表の障子に燃えて映る炎が輝く目の光のようで」「障子を開けようとしたが開かず」などとある。
さらに、武太夫は寝間わきの太刀を探し出し断ちまわったとあるが、『朝霧』の方でも御幸おばさんが太刀で斬り伏せている。そして、共に逃がしているのだ。

同時期、権八の方には子供らしい一つ目が現れる。
これは『朝霧』の四話②で柚子を邪魔した一つ目の妖怪である。「身がすくんで動けなくなる」との描写があり、柚子がかけられた金縛りとも共通するところがある。

さて、『稲生』の方ではこれをきっかけに、武太夫と権八は共に退治しようとなるのだが、『朝霧』ではどうだろう。
実は、この事件をきっかけに忠尋と柚子の間も、やはり近づいているのだ。

ここからは、(面倒なので)単純な並行比較で行こうと思う。日にちは稲生怪談における日数。


【二日目】
 稲生…行灯が急に燃え上がり、水が大量に湧いてきた。
 朝霧…教室の蛍光灯が燃え上がり、水飲み場の水道から水があふれる。
 (第六話①②)

【三日目】
 稲生…女の生首が逆さになって現れ、天井からひょうたんのツルのようなものがぶら下がる
 朝霧…体育館にてひょうたんが天井からぶら下げられ、女の生首が逆さになって転がってくる。
 (第六話②)

【四日目】
 稲生…水がめの水が凍り、茶釜のふたが開かず、火吹竹は吹いても風が起きず、棚にあったちり紙が飛び散り蝶のように舞う。
 朝霧…職員室のプリントが飛びまわる。
 (第六話②)

【五日目】
 稲生…米三斗俵ばかりの石に足が生え、蟹のような目でにらむ。車止めの石を化物が運ぶ。
 朝霧…蟹のような妖怪があらわれる。
 (第六話③)

【六日目】
 稲生…戸口いっぱいの婆さんの顔。
 朝霧…体育館の扉を開けると婆さんの顔。
 (第六話②)

【七日目】
 稲生…親しい友達が集ったが、外を見回る権八の前に大きな坊主があらわれたので槍で突いた。
 朝霧…学校に大きな黒い坊主があらわれるようになる。
 (第七話①)

【八日目】
 稲生…塩俵が二、三個部屋の中を立ちまわる。木靴が一足急に飛び去る。
 朝霧…教室で塩俵、木靴が飛びまわる。
 (第七話①)

【九日目】
 稲生…知り合いが名刀を盗み、石臼が妖しいと切りつけ刃こぼれさせる。そして切腹したが、その死体は消えてなくなった。
 朝霧…御幸おばさんに化けた妖怪があらわれる。
 (第八話①)

【十日目】
 稲生…友人に化けた妖怪が、頭が二つに割れ、中から赤子がたくさん出てきた。
 朝霧…ダディの頭が割れる。
 (第八話②)

【十一日目】
 稲生…すり鉢とすりこ木が台所から出てきて踊った
 朝霧…特になし(微妙だが、たらいはあった)

【十二日目】
 稲生…祈祷の札に墨を塗られる。つづら籠が大きなひきがえるに化かされて出てくる。
 朝霧…柚子が籠の中の蛙に憑かれる。
 (第八話③)

【十三日目】
 稲生…友人が集い仏具を借りに行くが、仲間の一人が降ってきた真っ赤な石に当たり腰を負傷。武太夫はそれを背負って帰った。
 朝霧…神社の倉庫へ石臼を借りに行くも、柚子が飛来した石により負傷。忠尋が背負って帰る。
 (第十話①②)

【十四日目】
 稲生…裏にある石臼がひとりでに米をつきだす。天井一面が老婆の顔になり、長い舌をだして武太夫をなめまわす。
 朝霧…石臼が全自動。天井に老婆の顔。忠尋羞恥プレイ。
 (第十話②)

【十五日目】
 稲生…居間の中が真っ白でねばりつく。
 朝霧…特になし

【十六日目】
 稲生…居間にかけた額がトントン鳴り響く。台所の漬物桶がひとりでに出たり、机が踊りだす。
 朝霧…蕎麦や机が引っ張り上げられる。
 (第十話④)

【十七日目】
 稲生…訪ねてきた婦人の頭にたらいが落ちる。くしに刺された幼児の首が跳ねまわる。
 朝霧…くしに刺された幼児の首が跳ねまわる。
 (第十一話①)

【十八日目】
 稲生…居間の畳が全部糸で吊りあげられる。錫杖がひとりでに出て飛び歩く。
 朝霧…机が糸で引っ張られる。
 (第十一話①)

【十九日目】
 稲生…罠を張る。
 朝霧…特になし

【二十日目】
 稲生…餅菓子を持った美しい女性が訪ねてくる。
 朝霧…菊理(山の神)が強奪した餅菓子を持って訪ねてきた。
 (第十三話③)

とりあえずここまで書き記した。実はこの後、箒が勝手に舞うなどがあるのだが、省略する。
時系列までしっかりと組み込まれているから凄い。
ついでに言うならば、忠尋と柚子は夜に山登りもしている。この辺は微妙に稲生怪談の冒頭を表しているような気がしないでもない。

作者の宇河さんはこのような伝承・伝奇が好きなのか、物語の中に民俗学的なネタがいくつか含まれている。僕はそれが大好きだったりする。


【ネタバレ注意】朝霧の巫女 五巻雑感
第十六話
【神隠し①】
四辻。此界と他界の境目ね。
・靴を脱ぐのは、外と中を区別するため。日本独特の風習。
蝶は生と死の象徴。
・『痩せた男』は何の比喩?

【神隠し②】
忠尋が消えたのは横断歩道。これも境界。
それと乱裁が死を望む件。最初の頃の、車にひかれても、何をされても死なないってことからか。
アレ、コメディネタかと思ったんだけど伏線だったのか(白目)
再び、痩せた男。
逆さまに吊るされた人間。足がないことから、あの幼虫みたいなやつかなぁ

【神隠し③】
マヨイガと片目忠尋。
・鬼太郎へのオマージュ。

【神隠し④】
“呼ばわり”
平田とこまさん。
とりあえず現世のは終わり。

第十七話
【こま①】
過去編。
こまさんと花於ちゃん。最初、花於ちゃんが誰だかわからなかった。
・『妖の寄る家』の草履の女の子な。
潰された天津堂。これは忠明の死後。
こまさん、忠寿を出産。成長する忠寿。そして山に呼ばれる忠寿。
盲愛。
花於ちゃんの「また背がのびたね」
・妖怪である自分と、人間の倉子の違い。
蜂の巣は落ち、アリに食われてる。
・蜂は妖怪、アリは人間の比喩か。

【こま②】
蜂はこま、幼虫は忠寿の比喩かな?
市子を依代に山の神が降臨。スサノオか。

【こま③】
蜂と芋虫。他を犠牲にして我が子を育てる蜂?
イザナミノミコト(=スサノオに取っ手の母)を岩戸から、『朝霧の巫女』が産道となり『審神者』が取り出す。

【こま④】
妖怪は所詮妖怪。花於ちゃん……
朝霧の巫女は此界と他界を繋ぐ産道、途中で出しても結局他界の風体なのな。
これが『霊崩壊』ね

第十八話
【素戔嗚尊】
エヴァみたいな視覚イメージの連続。もうわけわからん。
とりあえず、主上に降りていたのは素戔嗚尊、スサノオってことね。

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