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「SPEC」における当麻紗綾の名前の元ネタの考察

《2014-02-09》   



注意以下、『SPEC』本編、及び劇場版『SPEC結』漸ノ編・爻ノ編のネタバレを含みます。ご注意ください。



 当麻紗綾の名前は刀鍛冶と『鞘』から取られている――という話があるが、実はそれはある種のフェイクではないか、とあえて邪推してみようと思う。その情報の出自が、劇場版『SPEC結』の放映以前だからである。
 奈良県北葛城郡に当麻町という地名がある。端的にいうならば、そこにある當麻寺(たいまでら)が当麻紗綾の名前の元ネタではないか、ということである。
 當麻寺(あるいは当麻寺)の詳しい情報は當麻寺公式サイト http://www.taimadera.org/history/index.html を参照していただくとして、ここで注目して欲しいのは本尊として祀られている「當麻曼荼羅(――まんだら)」である。
 當麻曼荼羅とは、奈良時代の若き中将姫という(伝説上の)人物が、長谷観音のお告げにより仏行に励み、徳によって仏の助力を得、一夜で蓮糸で織ったとされる巨大な曼荼羅のことである。
 曼荼羅というものは、所謂織物である。絹織物を意味する「紗」、織物のあり方「綾」、幾分か婉曲とはいえ、曼荼羅の制作を指す言葉で成り立つ名前なのはなかなか興味深いものがある。中将姫を扱った折口信夫の『死者の書』でも、曼荼羅に織り上げた姫がさまよう魂を鎮め、自らも浄土へといざなわれる描写がある。ここは『爻ノ編』でのラストに被る。
 また能にも「当麻」という題目が存在する。それは念仏の行者の元に中将姫の魂が登場する(だいぶいいように曲げた考察だが)、『SPEC 爻ノ編』でのラスト、その念仏の行者を瀬文とし、その元に現れる当麻の像と被らなくもない。
参考

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