■「これなんてあの花?」を逆手にとった構図の反転の妙
途中の伏線で、雫や友人たち二人とのやりとりは妄想の出来事ということは誰にでもわかるようになっているのだけど、それを上書きするかのようにひっくり返すラストの豪腕は見物。
本作はエンディングが大きく分けて、
①バッドエンド(始めに戻る)
②雫バッドエンド(裸エプロン)
③ノーマルエンド(墓エンド)
④雫トゥルーエンド(生還エンド)
の四つある。二重も三重も入れ子構造になっているのでわかりづらいが、便宜上、現実世界での確定事項は以下、
1.幼少期に雫と忘れな草を植え、プレゼントを渡す
2.学園に進学後、仲良し四人の仲が疎遠になる
3.主人公が雫をナイフで脅迫、レイプする
4.主人公、自らの胸をナイフで刺し入水。雫も助ける為に水の中へ
そしてここから本編(主人公の脳内世界)がスタートする。
1'.二年間疎遠だった雫と再会する
2'.雫と主人公は付き合い始め、四人がまた前のように仲が良くなる
3'.主人公、穴を掘る夢を見る
4'.主人公、違和感を持ち始める
次に以下のように分岐する。
①バッドエンドルート(始めに戻る)
5'.めぐみとセックスをする
6'.自らが雫を殺害したと思い、ナイフを沼のそばの木の下に埋める
7'.はじめにもどる
ループエンド。トゥルーの言葉を見るからに、最低一度以上はこのルートに入っていると取れる。
②雫バッドエンド(裸エプロン)
5'.上記1'~4'までが妄想だったと気付く
6'.主人公、雫を陵辱したことを思い出す
5(現実世界?).主人公、妄想から覚めないまま歩きまわる
浮気(めぐみとセックスまで)してしまうとこのルートに入る。このルートでのみ、主人公がめぐみを陵辱したことが現実世界の事実として付け加えられている。
③ノーマルエンド(墓エンド)
5'.上記1'~4'までが妄想だったと気付く
6'.主人公、雫を陵辱したことを思い出す
7'.自殺しようとしたところを止められる
5(現実世界).主人公と雫、死亡。二人の墓に友人が訪ねてくる。
めぐみにフェラされるとこのエンドに入る。
④雫トゥルーエンド(生還エンド)
5'.上記1'~4'までが妄想だったと気付く
6'.主人公、雫を陵辱したことを思い出す
7'.自殺しようとしたところを止められる
5(現実世界).ふたりとも生還。友人二人が病院を訪ねてくる。
めぐみの誘惑に負けなかったらこのルートに入るのだけど、選択肢の関係でおそらく一番このルートが入りやすい(=最初に見てしまいやすい)。そこは構成が失敗してたんじゃないかなと思う。(一度目は強制的にループエンドに入らせるなどの処置が必要だった感じはある)
■どこからが現実で、どこからが妄想か
この物語は、おかしな性質を持っている。
それは②の裸エプロンエンドだとわかりやすいのだが、
妄想世界での選択肢が、未来だけではなく過去の確定していたはずの現実世界を改変しているという点。どういうことかというと、「めぐみとセックスする」という選択肢が、過去の現実世界の回想に影響を与えている(「めぐみを陵辱していた」という現実世界・過去の出来事になっている)のだ。これが現実世界(とされてるもの)の不確定さを顕著にしている。
そういった視点で見ると、この物語におけるトゥルーエンド(と思われる大団円的救済エンド)は、本当にトゥルーなのかと疑わずにはいられない。
そもそもこの物語自体、万華鏡の中のお話。観測者のそのときによって全体像が変わる鏡の中の話だ。万華鏡というモチーフを上手く使った、なんとも面白い構図になっている。