15.上を向いて


     ■




「ふむ……」
 紫藤は死体の傍らにしゃがみ込む。
「撲殺、かな」
 そうですね、と綾姫が同意する。
「凶器になりそうなものは……」紫藤はあたりを見回す。「……ないね。密室なのに。犯人が持ち帰ったのか」
 綾姫は黙ったまま、現場を見回してる。紫藤はふたたび死体に目を落とす。
「鈍器……重量のある、平べったい……ハンマーみたいなものかな。結構大きいと思われる」
「ねえ、先輩、あれ……」
 綾姫が紫藤の肩を叩く。
「どうした」
 紫藤が顔を上げると、綾姫が天井を指さしていた。指先を追う。ふたり並んで上を見上げる。
「ああ……あれか」


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